クリエイティブユニークネス

クリエイティブユニークネス(ブランディングオフィスのコンセプト)

PCのモバイル化はワーカーをオフィスから解放しました。その為、オフィスの存在価値は、そこでの人と人の関わりをどのように設計するか。そのためのワーカーのモチベーション、メンタリティをどうデザインが支援していくのかというところに、焦点が絞られてきました。特に知識創造型オフィスが注目され始める中でその企業にしかない個性というものが、今後ますます重要なブランディングのテーマとなっていくでしょう。
 当事務所がテーマとするのはクライアントの経営理念とデザイン・アートとの融合です。経営理念・事業ビジョン・組織論・ビジネスモデルをコンセプトとし、それらが持つ個性をどのようにデザイン・アートという表現でオフィスのワークスタイルやスペースに置き換えるかが、ブランディングの本質であり、またそのことが、オフィスの知的生産性にも大きく貢献するものと考えています

毎日、会社へ行くことが楽しくなる。
アイデアがよく出る。
コミニュケーションしやすい。

 今、あなたのオフィスはどうですか?オフィスが本来持っているべき「空間の質」と考えると、当たり前であるべき事柄だと思いますが、いかがでしょうか?
 抽象的でわかりづらいと思いますので、ここでは、具体的なプランを紹介しながら当事務所のオフィスプランの考え方をまとめました。

reiauto2 _ 1.tifA案 クリックで拡大。無断転載禁止©Design Lab.HARA
reiauto1 _ 1.tifB案 クリックで拡大。無断転載禁止 ©Design Lab.HARA

レイアウトの考え方


まずA案(左図)を見てください。一般的なオーソドックスなレイアウトです。このビルは築30年ぐらいの、非常に設計しづらいビルです。フロアー面積は約880㎡で社員数は77名です。コンサルタント会社であるため、来客スペースを充実させています。レイアウトの仕方は一般的な島型対向並列型で、上長以外はユニバーサルプラン(注1)を採用し、スペース効率を上げています。センターコアで執務スペースの奥行きが浅いため、一人1400ワイドのデスクスタンダードでは、ちょっときつめのレイアウトになっています。
 あまり、単調になりすぎないように通路はビルの形状を通路の流れに多少反映させ、いびつにして変化を与えています。
 また、センターコアで、上下に組織が分断される為、中間にリフレッシュ的なコピーコーナーなどのコラボレーションエリアを設けることで、コミュニケーションの断絶を補っています。

 さて、B案をみてください。同じスペースを同じ人数で使ったプランです。どちらが働く人を生き生きとさせると思いますか?
 B案も島型対向式レイアウトですが、並列性を崩して、ビルの形状をまるで無視したような、躍動感を感じさせるレイアウトです。同じビルでも、これだけイメージの違う空間ができます。このプランのコンセプトは組織同士の一体感です。島同士がセンターコアで分断されないようにあくまでもV字に配列されているような雰囲気づくりをしています。また、ビルの壁と並列でなくレイアウトすると、視界が壁に対して斜に向かうため、奥行き感を感じさせる効果や、ワーカー同士の視線の交差がランダムになることで軽い緊張感と安心感を生み出します。
 しかし、このBプランを専門家が見ると、間仕切りの位置がビルの照明や空調に配慮されていなさそうなので、ビル設備の変更コストがかさむのではないかという意見が出てくると思います。これは全くその通りですが、よく見ると、できるだけ変更が少なくなるように配慮していることがわかると思います。
 デクスのレイアウトは斜めではありますが、間仕切りを建てたところがないので、全く問題ありませんし、リフレッシュに面したRの壁は欄間オープンですから照明のスイッチ切り替えは発生しますが、空調は問題ないでしょう。そうして見ると、レセプションエリアの斜めの壁とボードルームの丸い部屋の部分に関して変更が発生しそうだということがわかります。それを、無駄と考えてA案にするのか、その目指すところの効果に投資するのか。というのはまさにその経営者の姿勢と言うしかないと思います。

 A案でも、この程度の規模であれば並列レイアウトで我慢はできるかもしれませんが、もしこの考え方で、大企業の広いワンフロアーをレイアウトしたらどうでしょう。私は、戦慄と嫌悪感さえ覚えます。どんなに立派なビルに入ったとしても、そのような環境で人が力を存分に発揮できるとはとても思えません。レイアウトはそれほど、人の心理に大きな影響を与えるものだと思っています。特に問題なのは、この並列レイアウトありきでプランを進めると、おのずから、動線や通路、部屋の配置が当たり前のように決定されてしまうことです。それほど、デスクレイアウトはオフィスレイアウトの中で重要なファクターを占めています。
 人のモチベーションを高めるレイアウトとはどんなものなのか。私はビルの形状によって全く違った解が出てくると思いますが、それがまた個性として新たな知的生産性向上を約束するものと考えています。
 もちろん、組織をどのようにマネージメントしようとしているのかは経営者の姿勢にかかっていますが、その意思をどれだけ汲み取って、レイアウトに落とし込めるかは、経営者とデザイナーとのコラボレーションの質にかかっているといっても過言ではありません。知識創造型ワークプレイスの狙いである「異質な分野のコラボレーションが新たな知識を創造させる」のだとすれば、このオフィスづくりの出発点も経営とデザインという異質なコラボレーションを出発点としたかどうかが鍵を握っていると思います。

(注1)ユニバーサルプランとは

  •  ユニバーサルプランでは、職位も、職種も関係なく、あらゆる社員が同じ規格の個人席をあてがわれるので、デスクがステータスシンボルだという考え方がない。これはコストメリットを追及した仕組みで、ダイナミックな組織の変化に素早く対応するためのファシリティ主導の考え方である。

ワークプレイスの考え方

 最近よくフリーアドレス(注2)導入が新しいワークスタイルとして取り上げられることが多くなりました。しかし、その多くはユニバーサルプランとワンセットにされてスペース削減を目的としていることが多いと言えます。表向きはワーカーのコミュニケーションの活性化とか言っていますが、よくよく見ると、ほんとにそうなの?と思う様な例は結構あります。先ほどのプランはいずれもフリーアドレスをベースに、レイアウトはユニバーサル方式をとっています。組織に島をあわせると、オフィス環境が混沌とし、無駄な空間が発生するため、今では割と当たり前のように取り入れられるようになりました。しかし、本来のフリーアドレスの目的は仕事の内容に合わせて仕事のしやすい環境を選べるというワーカーの視点に立った発想です。ですから、先ほどのプランでは申し訳程度にシンキングルームを設置していますが、いろいろなバリエーションのワークスペースを用意し、業務内容に合わせて、場所を選ぶというのが理想です。もちろん業種によってそのあたりはバランスを考えなくてはなりませんが。当事務所では基本的にフリーアドレスをお勧めしますが、その企業の文化や成長度合い、業務内容を見て、適していないと判断した場合は無理にお勧めしていません。

(注2)フリーアドレス(ノンテリトリアル・オフィス)とは

 フリーアドレスは同じ席で固定的に仕事を進めるより、業務内容に合わせてさまざまに場所を選びながらアクティブに仕事をすることを目的としている。(ノンテリトリアル・オフィスはもともと、スペースの有効利用を主目的としていた。昼間は不在の営業マンの席は、少なめにしておいて、さらにいない時は席を自由に使わせるという発想。)
その他のノンテリトリアル型オフィスとして、予約制で席を利用する「ホテリング」、出張者などの為の「タッチダウンオフィス(スポットオフィス)」などがある。

カラー・マテリアル計画

 最近テレビドラマを見ていて、お気づきと思いますが、割とカラフルなオフィスがドラマに出てきます。ポップな色がオフィス空間に取り入れられることで、溌剌とした雰囲気が感じられます。かつては、オフィスといえば、白い壁とグレーのデスク一辺倒で、オフィスとは禁欲的に事務作業をこなす場であるという先入観を植え付けられたようなところがありましたが、「ワーカーのクリエイティビティをいかに出すか」、ということが企業の至上命題になりつつある今日、手っ取り早い方法として、カラー計画は極めて、効果のある手法です。
 次にマテリアルですが、次の照明計画のCGはB案のエントランスを入口から見たところです。石と和紙風のガラスで構成し、質感を出しています。オフィスというとあまりお目にかからない素材ですが、都会の空間であればある程、お客様をお迎えする空間は自然観を漂わせたおもてなし感覚を醸し出す必要があります。その為には自然の持つ画一されない素材感はうってつけです。

照明計画

entorance.jpg 欧米では今、自然光をどうやってオフィスに取り入れるかということをテーマとしたオフィスが増えているようです。これは省エネという観点もありますが、人間が太陽光の持つエネルギーで覚醒するという自然界で育まれた生理的な身体反応に配慮しているということがあります。ですから、かつてはエグゼクティブが窓側を個室にして占有していた部分をワーカーに開放して、彼らのモチベーションをできるだけ高めるオフィスづくりが増えています。
 とは言ってもやはり照明が必要なところは必ず出てきます。しかし、既存のビルの照明では平板な空間にしかなりません。ですから、照明に対する配慮がどうしても必要になります。そこで、外部の採光が届かない部屋は逆にそれを利用して、照明計画を暗めの設定にすることで集中した業務空間を作ったり、集中した討議を行いやすい環境や、おもてなしのくつろぎ空間等をつくります。
 ところで、Bプランでは、ボードルームは窓面に接していません。多少のスリット窓は配していますが、それも、スクリーンを下せば、全く暗い空間になります。その場の議題に合わせ、照明の調光システムを入れることで、場の環境をコントロールできます。左のCGはエントランスですが、外光は接客個室までで止めて、各個室の横ルーバーの間仕切りの和紙風ガラス越しに柔らかい光がホールに入る設計にしています。そして補助的にダウンライトを配し、くつろげる空間づくりを心がけます。

コミュニケーション計画

KINKOS.tif 今まで、コミュニケーション計画とは主に部署間の近接関連や会議室など人の集まるスペースをどのくらいとるのかという考え方ですんでいたところがあります。しかし、いまや、コミュニケーションとは、時・場所を選ばず、人と人が出会う瞬間に発生するという考え方に立ち、そのコミュニケーションの質をどこまで高められるかというところに重点が移ってきました。通路はもはや通りぬけるだけのスペースではなく、コミュニケーションを促進させるスペースとして、重要視されていますし、さらにかつてのリフレッシュスペースもコラボレーションの為のスペースとして、極めて重要な空間という位置づけがなされるようになりました。あらゆる空間の隙間にワーカーを刺激する仕掛けを作ることが大切と考えています。B案ではそのような視点から、通路面にはスターバックスのような喫茶カウンター、キンコーズのようなカウンター、ライブラリー、作品パネルなど、人のコミュニケーションのきっかけを促すような仕組みをしつらえています。


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